2013年 01月 05日
[HRPニュースファイル508] 日本も「消費税増税」という「財政の崖」を全力で回避せよ!
[HRPニュースファイル508]転載
日本も「消費税増税」という「財政の崖」を全力で回避せよ!
2013年1月4日
◇世界が安堵した「財政の崖」回避
米上院と下院は1月1日、緊縮財政によって米景気が悪化する
「財政の崖」の回避策を盛り込んだ法案をそれぞれ
賛成多数で可決しました。
中間層の減税維持と引き換えに富裕層への増税に踏み切り、
国防費など歳出の強制削減の開始は2カ月延期されることになりました。
これにより米国のほぼ全世帯は年末でいったん失効状態となった
減税措置の多くを回復。
急激な財政緊縮で経済に深刻な打撃が及ぶ事態は回避されました。
「財政の壁」が回避されなければ、大増税と大幅な財政緊縮の
両方が同時にアメリカ経済に襲いかかるところでした。
その規模は2013年単年度でも約6000億ドル(約53兆円)と巨額で、
両方とも景気を冷やす効果を持っているため、株価の3割が吹き飛び、ア
メリカのGDPが3~4%下がるとの予測もなされていました。
米国経済が「財政の崖」に落ち込めば、世界経済が受ける影響は
深刻で、「円安株高」が進む「アベノミクス」も一気に
吹き飛ぶところでした。
「財政の崖」が回避されたことによって、NY株が急騰。
ヨーロッパや日本市場でも「財政の崖」が避けられたことに
対する前向きな受け止めが広がっており、株高をもたらしています。
野村証券のエコノミストは「最悪の事態が回避され、マーケットでは
取りあえず安心感が先行している」と指摘。また、円安を受けて
輸出企業の来期収益への期待感は強まっており、
「年始の日本株はロケットスタートになる」と予想しています。
(1/4 ブルームバーグ
「日本株は連騰へ、2年5カ月ぶり円安好感-『財政の崖』回避」)
◇「合意」の本質は増税
しかし、これで米経済が好転していくかどうか楽観視はできません。
米株価の上昇はオバマ大統領が再選されてから株価が急落し、
NYダウは1万2500ドルあたりの水準まで下がっていたことへの
反動に過ぎません。
「財政の崖」回避に向けた民主党・共和党合意の結果、減税打ち切りの
対象は大統領が提案していた年収25万ドル(約2180万円)以上から、
野党共和党の反発で45万ドル(約3900万円)以上に狭められたものの、
富裕層への課税強化で所得税は20年ぶりに実質増税になります。
ブッシュ前大統領が大型減税による景気対策を行ったのに対して、
「富裕層は応分の負担をすべきだ」と主張するオバマ大統領による
富裕層増税が押し通された形です。
また、富裕層へのキャピタルゲイン(有価証券売却益)や配当への
税率引き上げ(15%⇒20%)や遺産税の引上げ(35%⇒40%)なども
決定されました。
また、富裕層と関係なく、社会保障給与税は、これまでの
2%カットが廃止されます。社会保障税が2%増税したに等しく、
米国民の幅広い層に増税が及びます。
日本でも、昨年4月に年少扶養控除を廃止された結果、勤労者世帯の
消費が落ち込みましたが、米国でも今後、増税による消費の落ち込みが
景気悪化を招くことが懸念されます。
◇米軍事費の大幅削減で、日本は自主防衛を迫られる
また、財政支出の大幅削減については2ヶ月間凍結という
「結論先送り」の形になりました。今回の回避が無ければ、
巨額な軍事費と社会保障費の「強制的(自動的)な歳出削減」が
なされるところでした。
今後、来月末に向けて、社会保障費は据え置き、軍事費削減を
優先する民主党と、軍事費は据え置き、社会保障費削減を目指す
共和党との激しい対立が続くことが予測されます。
この成り行きによっては、日本は経済のみならず、安全保障面に
おいても多大な影響を受けることになります。
軍事費の大幅な削減がなされれば、「世界の警察」としての
アメリカのプレゼンスは後退し、日米同盟の抑止力が低下する他、
長期的には「軍事力の米中逆転」に陥る危険性も強まります。
いずれにしても、ある程度の米軍事費の削減は不可避であり、
日本は核武装も含め、「自分の国は自分で守る」自主防衛体制を
進めていくことが急務です。
◇「消費税増税」という「財政の崖」を回避せよ!
日本では、既に「増税ラッシュ」が始まっています。
昨年10月から「地球温暖化対策のための税(環境税)」がスタートし、
今年1月から「復興増税」という名の増税(所得税額の2.1%上乗せ(25年間)、
住民税増税等)が始まりました。
そして、消費税は来年2014年4月1日に8%、15年10月1日に10%へと
連続アップする予定です。消費が低迷する中での消費税増税は
「日本経済の自殺」に等しい行為です。
本年2012年の日本のGDPも、復興需要が伸びず、下方修正の見込みですが、
こうしたデフレ不況が続く中で消費税増税を強行すれば、まさしく
日本経済は崖から転落します。
自民党は消費税増税法に賛成した立場上、消費税廃止はしづらい立場に
ありましょうが、安倍首相は勇気を持って消費税増税法を廃止し、
日本の「財政の崖」を全力で回避すべきです。(文責・黒川白雲)
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